「RNAコロナワクチンにDNAが混入している?」記事掲載の折、新田剛先生からRNAコロナワクチンへのDNA混入について意見を求められました (コメント欄)。
私自身は新田先生と考えは異なります。コメント欄ですと字数制限もありますので、記事を持って返答とさせていただきます。
さて、Kevin McKernan博士の研究は深刻な疑惑の問題提起であり、現在分かっている範囲でも既に大きなスキャンダルです。
まず、ご意見をいただいて大変驚いたのは、新田先生自身がそもそもDNAの混入自体は当然のように認めており、それどころかそれを前提とした話になっているという事です。しかしながら、先生のおっしゃる「周知の事実」というのは正しくありません。私の知る限り、政府、公的機関、マスメディア、医療機関、ワクチン研究者の誰一人として、RNAワクチンにDNAが混入している事はこれまで一切周知してきませんでした。それが、いつの間にか「混入ありき」として議論が進めれられており、これは正直なところ問題の本質をすり替えようとしているようにすら見えてしまいます。
私はこのスキャンダルは単に「量」や「環状プラスミド」の問題として矮小化されるべきではないと考えます。実際、「環状プラスミドが入っていなければ問題ない」というわけではありません。トランスフェクションに使われるDNAは通常は直鎖状です。ゲノムに取り込まれる際にDNAはどこかで切断されなければならず、環状DNAだと切断点がランダムになるためです。さらに、組み込みのためのDNA切断面がすでに存在しますのでゲノムへの組み込み効率も上がります。直鎖状DNAは環状DNAにも増して危険であり、環状プラスミドが入っていなければ安全という事は決して言えません。
そして、DNA断片であっても無害とは限りません。細胞外から侵入したDNAは自然免疫系から感染体と認識され、強い免疫刺激を起こします。クロモスリプシス (染色体破砕) という現象もあります。1つもしくはごく少数の染色体において、数十〜数千箇所にも及ぶ崩壊と再編成が起こる現象です。この現象は、局在、限定された遺伝子領域において、たった一度のイベントで発生し、悪性腫瘍および先天性疾患において認められます。DNA組換えも単純なものから複雑なものまで作用機序は多様です。多彩なDNA断片が細胞内に侵入した場合、染色体にどう作用し、組換えを誘発するかは予測できません。
そして、そもそも「安全なDNA量の閾値」というものは存在しません。規制当局が決めた数値はありますが、その数値とゲノムへの取り込みの有無の関係については実際のところは不明です。特にこのコロナ騒動においては、規制当局の不正自体が大きな問題になっています。規制当局が決めた水準が安全性を担保するわけではないという事です。厚生労働省がコロナワクチン接種に関するデータの捏造、改竄をしてきたように、政府や公的機関はコロナワクチンについては極めて不誠実な行動を繰り返してきました。
今回、McKernan博士によってコロナワクチンベクター内にSV40プロモーターが発見されましたが、このSV40プロモーターの存在は予期されていなかったものです。このようにコロナワクチンに含まれるDNAの塩基配列は「未知の配列」を含む可能性があります。
ファイザーおよびモデルナのコロナワクチンのスパイク遺伝子はコドン最適化のために武漢型コロナウイルスのスパイク遺伝子からかなり配列を変えられています。そして、ファイザーとモデルナのワクチンのスパイク遺伝子の間でも配列は異なっています。codon optimization (コドン最適化) の正解は1つではありません。addgeneに登録されているコドン最適化スパイクベクターも配列は様々です。ワクチンメーカーがロットごとにコドンを変えていた場合、別のスパイク遺伝子に対するプライマーは機能しない可能性を考える必要があります。既知の配列の増幅用にデザインされたプライマーは未知の配列の検出、定量化には適しません。このコロナワクチンが善意のみで作られたという事自体を疑わざるを得ない状況の中、そうした事態も想定が必要でしょう。
未知の配列を網羅的に解析するためには、現状ではディープシークエンシングが必須となります。配列が分かってこそ、その配列を含むDNAやRNAの定量化ができます。つまり言い換えれば、どの配列が含まれるか分からない状態でのPCRなどは単なる「当てずっぽう」の実験であり、目隠ししながら研究しているようなものです。想定されない配列を検出する実験系が組めないからです。
また、実験上で大腸菌への形質転換できなかったとしても、その場合に考えられる理由は複数存在します。まずは適切な選択用の抗生物質が必要であり、不適切な抗生物質耐性遺伝子を持つベクターでは形質転換自体できません。このためにも配列の確認がまず必要です。もう一つの大きな要因は、混入しているDNAの大部分は直鎖状だと考えられるからです。環状プラスミドがT7ポリメラーゼによるin vitro転写に不適切だからです。理由は下記に記します。直鎖状のプラスミドでは形質転換できません。T7プロモーターは大腸菌での発現ベクターに用いられる事も多いのですが、そうした発現ベクターは低コピー複製起点を持つものが多いです。そうしたベクターはDNA収量が極端に低い事があります。また、ベクターによっては菌に毒性があり、極めて収量が低い事もあります。こうしたごく基本的な注意点も考慮する必要があります。
ワクチンのバイアルに含まれるDNA、RNAの量は様々な要素に影響されます。核酸の化学的性質としてRNAはアルカリに弱く、DNAは酸に弱いという特徴があります。RNAの保存に向いているpHは、むしろDNAの分解を進める可能性があります。定量的な実験には質の良い材料が必要です。保存中に成分が分解していては何を定量しているかすら分からなくなるからです。そのため、保存状態の悪いバイアルは定量的な実験の材料としてそもそも不適切です。また、ロット差だけではなくバイアルごとに差がある可能性も高いです。例えば、多数の死者を出したコロナワクチンのロットも知られていますが、そのロットを接種した全員が亡くなる訳ではありません。その要因としては、接種者の体力、体質などの個人差以外にバイアルごとの差も否定できません。
例えば、食品への異物混入が起きた際などは、いくつかのサンプルをピックアップして調べ、それに混入がなければ即問題無しとはなりません。何十万個生産された食品のごく一部に異物が混入した場合でも、全製品回収になる事が多いです。そのように、もしたった数個のバイアルを調べて異物が検出されなかったとしても、他のバイアルがどうか自体は別の問題です。しかもコロナワクチンは、体内に直接注入される遺伝子製剤であり、食品よりもはるかに高い安全水準が要求されるはずです。
一般論として、存在を証明するには1つ例を上げれば良いのですが、逆に存在を否定するのは難しいものです。説得力を持たせるためには膨大な量の実験が必要となります。McKernan博士の実験を追試して反証しようとする際には、少なくとも彼と同等レベルか、より高い基準の実験が要求されます。
まずは日本で接種されたコロナワクチンの全ロットの遺伝子解析が必要です。しかも、各ロットにつき「保存状態の良い」バイアルを複数調べて欲しいものです。さらに要求されるものとしては全成分分析となります。実際のところ、DNAが入っていたくらいですので、他にも何が入っているか分からないのです。
以下、混入しているDNAの大部分が直鎖状だと考えられる理由について述べます。T7ポリメラーゼによるin vitro転写で質の良いRNAを合成するためには直鎖状のDNAが適しています。T7ポリメラーゼはプロセシビティが高く環状のDNAを鋳型に使うと周回するような転写産物も作られてしまうためです (ポリメラーゼのプロセシビティとは、ポリメラーゼが鋳型鎖との会合イベントごとに合成するヌクレオチドの平均数の事です)。このため通常は環状プラスミドはin vitro転写に用いません。また、T7プロモーターの上流の配列もin vitro転写に不要な配列です。T7ターミネーターによる転写終結の仕組みも利用可能ではあるのですが、リードスルー転写を起こしやすいために、in vitro転写では通常使われません。転写を集結させたい箇所を鋳型DNAの末端にするのが定石です。プラスミドDNAを用いる場合は転写される挿入物の下流で制限酵素により完全に線状化される必要があります。一般的にはT7 RNAポリメラーゼの鋳型に向いているのは二本鎖DNA断片 (ゲルから切り出した二本鎖DNAやPCR産物)、長鎖オリゴDNAなどです。転写産物がベクターバックボーンやT7プロモーターを含む場合、それは実験デザインの失敗を意味します。
in vitro転写の鋳型に使ったDNAはDNase IなどのDNA分解酵素で分解するなどしてから除去しないといけないでしょう。DNase Iの作用機序はDNA二本鎖にニックを入れる、つまりのDNA二本鎖の片方を切断する事によります。しかし、この活性は非常に高く、通常のDNase Iの反応条件では二本鎖DNAは粉々になり、最終産物はオリゴヌクレオチド、あるいはモノヌクレオチドです。ちなみにニックトランスレーション用にはDNase Iの活性を抑えるために、非常に希釈したDNase Iを低温で用います。
DNase Iは逆転写の鋳型となるRNAからのゲノムDNAの除去にも使われます。一本鎖DNAが大量に残っては困る実験にも使われるという事です。DNAを除くための通常のDNase I反応条件では、通常の分解条件では長鎖の二本鎖DNAも一本鎖DNAも残らないはずであり、ディープシークエンシングに使える品質のDNAはほぼ存在しないのではないでしょうか。言い換えると、ディープシークエンシングに使える品質のDNAが残っている事自体がおかしな話であり、そうしたDNAは細胞に導入され、ゲノムに取り込まれる可能性が出てきます。
以上のような技術的な理由から、ベクターバックボーンのDNAがワクチンに残っているのは、杜撰な実験デザインのせいか、そうでなければ意図的なものではないかとすら考えます。また上記のような実験デザイン上の理由から、環状プラスミドは汚染しているDNAのうちのごくわずかな一部で、直鎖状DNAこそが汚染の本体のはずです (妥当な実験デザインであれば)。そして、直鎖状DNAもゲノムに組み込まれるリスク要因となります。
大前提として、コロナワクチンは遺伝子ワクチンであり、スパイクタンパクの毒性に加えて、遺伝子ワクチンのコンセプトとしてのリスクが問題となります。とりわけ今回のスキャンダルは遺伝子ワクチンの危険性を改めて浮き彫りにしていると考えます。いわゆるワクチン推進派が、コロナワクチン接種と薬害に因果関係が無いとあくまで主張するのであれば、私はその説明責任は否定する側にこそあると考えます。これは今回の件についても同様です。RNAコロナワクチンのDNA混入自体に「問題がない」とするのならば、その説明責任はそう主張する側にこそあるでしょう。残念ながら、私がこれまで警告してきたコロナワクチンの危険性のほとんどが現実のものとなってきました。DNA混入もそうなる事を懸念しています。コロナワクチンの危険性というのはリスク、つまり可能性の問題です。「危険性は証明されていない」という主張は言い換えると「安全な可能性がある」と言っているに過ぎないのです。
繰り返しますが、コロナワクチンのDNA汚染を否定する、あるいは問題無いとする場合は、たった数個のバイアルではなく、日本で接種されたコロナワクチンの全ロットの遺伝子解析が必要です。そしてそれらは適切な保存状態にある事が前提です。さらに必要なものは全成分分析となります。RNAコロナワクチンにDNAが混入しているのならばどの程度の量であっても事態は深刻です。DNA混入スキャンダルに対する懸念はDNAの単なる量の問題ではありません。量よりも重要なのはまずは遺伝子配列です。定量的な実験を組む場合はバイアルごとの混入したDNAの塩基配列に合わせたデザインが必要です。形質転換する場合にも抗生物質耐性などのベクターの遺伝情報が必要となります。何よりin vitro転写の実験デザイン上、意図的に混入させたものでないならば、汚染DNAの大部分は直鎖状DNAとなるはずで、形質転換できないものなのです。
そして、私を含めて大勢の人が実際に懸念しているのはコロナワクチンDNAの一部、あるいは大部分をゲノムに取り込んだ「トランスジェニック人間」になってしまった人がいるのではないのか?という疑問です。これが想定される遺伝子ワクチンの最大の副作用の1つです。遺伝子ワクチン推進派の人々はこの懸念について真剣に検討する義務があるでしょう。遺伝子ワクチンの研究者達にとって、新しい遺伝子ワクチンの開発よりもはるかに重要なものが「トランスジェニック人間」の判定法、およびその治療法の開発です。こうしたリスク対応を想定に入れない研究などまさに「片手落ち」でしょう。実際のところ「トランスジェニック人間」を元に戻す方法など現時点では存在しないのです。
RNAコロナワクチンへのDNAの混入についての情報はこれまで周知すらされてきませんでした。脂質ナノ粒子を介して、日本中、世界中の健康な人の細胞内にDNAを注入した事など有史以来初めてであり、その影響の大きさは計り知れません。
この件については東京理科大学名誉教授の村上康文先生とも議論させていただきました。4月15日(土)にTwitter上のスペース上で先生との対談の放送を予定しております。(※今回のスペースは既に録音されたものになりますのでライブではありません)